リベートを要求するのが当たり前の社会
中国の社会にとても根強く潜んでいるもののひとつに「ダメモト精神」がある。「だめでも元々」で損するわけではないから要求してみようという考え方だ。こうした「ダメモト」の精神構造はほとんど全ての人が持っているので時には嫌な思いをすることもあるが、国際的な視野に立ってみるとむしろダメモトの方が当たり前で、淡白にすぐ諦めて身を退く方がよほど少数派なのかも知れない。
昨日私が宿泊しているホテルの玄関でホテルボーイと50代と見えるお客が激しく口論をしていた。大きな声で言い合っていたので興味もあってその口論の内容に耳を傾けることにした。
この男性客がこれから浦東空港に行きたいとボーイにタクシーの手配を依頼した。ボーイは近くを通りかかったタクシーに声をかけて空港まで行くように言い、タクシー代の約1割に相当する20元のリベートを自分に渡すよう要求した。タクシー運転手がこのボーイの要求を断ったところボーイはそのタクシーにお客を乗せず空のまま行かせてしまった。
その様子を見ていた男性客は「時間が無いのにリベートが欲しいためにタクシーを行かせてしまうとは何事だ」とボーイに詰め寄った。ボーイは「そんなことは誰でもやっている当然のことだ」とお客に言い返した。それを聞いて男性客は更に頭がカッカする。最後はホテルのマネージャーが出てきて双方をなだめる。…そんな経緯だった。
このケースはどう考えてもホテルのボーイが良くない。その翌日からこのボーイの顔を見なくなったからきっとクビになったに違いない。私が宿泊しているホテルは三ツ星だから中レベルのホテルだが、ボーイはタクシーにリベートを要求することはそんなに恥ずかしいことではないと思っている。むしろダメモトで要求してみてうまく成功したらフトコロに入れる。
ボーイにしてみるとこんな楽しみでもないと安月給でやっていられないということだろうが、ここには大きな間違いがある。20元はお客が「手配してくれてありがとう」という気持ちでチップとしてボーイに渡すのであれば問題は小さくなる。しかしそのチップを自分のフトコロに入れることには問題がある。タクシーの運転手に20元を要求するのは職権の濫用であって責められなければならない。
ひと昔前であればタクシーの運転手は20元支払ったと思うが、今の上海ではこのような要求は通用しないのだが、それでも「ダメモトで言ってみる」のが中国的で今後も無くなることはないだろう。こうしたことは国単位でも地方政府の単位でも、また行政の下部においても当たり前のようにある。
商業取引や契約締結であっても「ダメモト精神」の両者が要求しあうということは日常的に行なわれている。昨日の口論を中に入ってとりまとめたマネージャーは顧客の主張を結果的に認めた。しかし私はこのマネージゃーが顧客にそっと「カネ」を渡している場面を見てしまった。まあまあ「どっちもドッチ」というところだ。逞しくなければ到底生きてはいけない…それが中国大陸のようだ。
■酒抜きで 仕事が肴 午前様